株式会社ヤクルト本社中央研究所 特別研究員 松本敏先生「腸内フローラと健康 ~プロバイオティクスの可能性~」を開催しました

12月6日(水)18:00-19:00、今年度第8回目の未来型医療創造卓越大学院プログラムFM DTS 融合セミナー(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門・医工連携イノベーション推進事業)株式会社ヤクルト本社中央研究所 特別研究員 松本 敏先生の講演会をオンラインにて開催致しました。

今回の講演では、腸内細菌研究のこれまでの軌跡、そしてプロバイオティクスの生理効果に関する最新知見と予防医療の発展にもたらす可能性についてお話しいただきました。

 

前半では、腸内細菌の個体差の存在について解説していただきました。昨今注目度が高まっている腸内細菌ですが、その研究の起源は17世紀後半までさかのぼります。現在では、ヒトの腸内細菌叢に関して、同一個人では経時的な変化幅は小さく安定していることがわかっている一方で、一部の変動幅の大きい腸内細菌叢の保有者においては疾患の悪化や合併症を起こしやすいことも明らかとなっており、その個体差の要因を追究していく必要性について説明していただきました。

続いて、講義中盤では、ヒトがどのようにして腸内細菌叢を形成し、維持しているのか、最新の研究を交えて紹介されました。ヒトは出生時に母親から細菌をもらい、以降は周囲環境の影響を受けて細菌叢を形成していきます。そして、生活習慣の欧米化やストレス、抗生剤の不適切な使用により母体を通じて次世代の腸内細菌叢構成へ影響が及ぼされることで、疾患増加の要因となり得ることを問題として提起されました。

 

後半では、プロバイオティクスの生理効果と今後の研究の展望についてご説明されました。現在、株式会社ヤクルト本社中央研究所では、L.パラカゼイ・シロタ株について、腸内環境の改善作用、免疫抑制作用に次ぐ新たな第三の生理効果の発見に向けて研究が進められているそうです。それは、ストレス緩和作用などの脳機能への影響であり、実際に学術試験ストレス下の医学部学生に対するストレス緩和効果を検証した実験を紹介いただきました。この実験により、シロタ株1000億個以上含む飲料を飲むとストレスが緩和され、睡眠の質も改善されることが明らかとなったといいます。このように、プロバイオティクスの効果は認められており、今後の研究で詳細なメカニズムを明らかにしていくことで、疾患治療やヘルスケアの場において人々に均一な効果を提供することが出来ることを示されました。

今回は、松本先生の腸内細菌に関する広範な専門的知識と、企業研究者としてのご経験から、大変興味深い研究結果を取り上げていただきました。プロバイオティクス研究の加速によって予防医療が発展していく未来への期待に心が弾んだ講義でした。

 

本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外458名の方々にご参加いただきました。

 

松本先生、ご講演いただきありがとうございました。