スタンフォード大学プログラムデザインプログラムディレクター(ジャパンバイオデザイン)池野文昭先生「シリコンバレーで今、何が起きているか?」を開催しました

4月26日(水)18:00-19:00、今年度第1回目の未来型医療創造卓越大学院プログラム(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門・医工連携イノベーション推進事業)FM DTS 融合セミナー スタンフォード大学 プログラムデザインプログラムディレクター(ジャパンバイオデザイン)池野 文昭先生の講演会をオンラインにて開催致しました。

今回の講演では、コロナ禍のシリコンバレーで起こった出来事を踏まえ、これからの日本の医療がどのように進んでいくべきか、池野先生独自の視点で解説いただきました。

シリコンバレーでは、コロナ禍の終息に伴い巣ごもり需要が収束し、GAFA4社の業績が悪化したため、昨年末から数万人のテック人材が解雇されました。また、テック・ヘルスケアテック系スタートアップを顧客とするシリコンバレーバンクが破綻し、それにより倒産連鎖が起こり、米国ではテック業界を含む多くの業界でさらなる人員削減の動きが出始めているほか、スタートアップ投資も急減することとなりました。

このような状況においても、比較的経済危機に強い分野である「医療」においては、製薬、医療機器などの医療関係のスタートアップが注目されており、特に近年では、分散化臨床試験(Decentralized Clinical Trial; DCT)に注目が集まっています。別名オンライン治験、リモート治験とも呼ばれるDCTは、家にいながら新薬の治験が行えるシステムであり、コロナ禍で製薬会社の治験が停止したことをきっかけに一気に開発が進展しています。さらに、一時的な巣ごもり需要だけではなく、DCTの導入により通常よりも早いエンロールメント、脱落者の減少、治験の高速化が実現したことから、コロナ渦が収束してからも需要が続くことが判明し、世界的に注目を集めています。

これらを支えているのはデジタルテクノロジーであり、医療分野でもテック人材の需要が高まっています。しかし、DXは手段に過ぎず、DXがもたらす世界の変化こそがゴールであることが求められています。アメリカでは、デジタルテクノロジーを用いて地域医療を最適化・合理化することで、人間中心の医療を実現しようとしています。特に、個別化された予防医療がポイントであり、この実現の入り口として、製薬会社や医療機器会社の資金が動くDCTは非常に都合が良いシステムです。これにより、デジタルインフラが整備されれば、個々のパーソナルレコードを取り、個別化医療を実現することができます。

一方、日本においては、少子高齢社会によるアンメットニーズが顕著になっています。保険制度や医師の労働環境などの問題点が山積しており、AI人材やテック人材が求められている中で、日本企業にとってはシリコンバレーでレイオフされたテック人材を雇用することができる大きなチャンスなのではないか、と締めくくられました。

本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外429名の方々にご参加いただきました。

池野先生、ご講演いただきありがとうございました。

文責:元インターン 岩本空(工学研究科修士2年)