東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授 合田圭介先生「細胞のウォーリーを探せ!」を開催しました
9月21日(水)18:00-19:00、今年度第4回目の未来型医療創造卓越大学院プログラム(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門・医工連携イノベーション推進事業)FM DTS 融合セミナー 東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授 合田圭介 先生の講演会をハイブリッドにて開催致しました。
今回の講演では、多種多様な細胞集団の細胞一つ一つを網羅的に撮像・識別し、深層学習を用いて特殊な細胞を選抜する「インテリジェント画像活性細胞選抜法」とその技術の応用展開についてご紹介いただきました。
細胞分析は、生命科学、医学、医療・バイオ産業など様々な分野でニーズがありますが、その作業はまさに「ウォーリーを探せ」のように、多くの似たような細胞の中から特殊な細胞を探すことが困難であり、研究の障壁となっていました。
細胞分析の伝統的手法では膨大な時間と手間がかかり、短時間で分析可能な手法(FACS)では特殊な細胞の同定・分取が不可能です。つまり、細胞分析において、スループット(1秒間に計測・分取が可能な細胞数)と精度はトレードオフの関係にあります。
そこで、合田先生のチームはこのトレードオフの壁を打ち破るような、細胞を高精度・迅速に選抜する技術「インテリジェント画像活性細胞選抜法(IACS)」を開発されました。IACSは、多種多様な細胞集団に含まれる一つ一つの細胞を自動で高速に撮像し、深層学習を実装したAIで特定の細胞を選抜するマシンであり、膨大な時間や手間がかかっていた作業を究極的に効率化できるようになりました。これにより、従来方法に劣らない精度で、ウォーリーのような特殊な細胞を発見するという未踏の領域を開拓することが可能となりました。
この技術は多種多様な細胞への応用展開が可能であるため、グリーンエネルギー、気候変動科学、がん診断、がん免疫療法、食品科学や、COVID-19への応用も展開されています。
現在では、細胞へのダメージを低減する「ラベルフリー化」に向けた研究を進められているほか、装置のオープン利用制度の確立やグローバル規模の学会運営、ベンチャー事業化などにも取り組まれ、IACSの活用の幅を広げられています。
最後に、細胞研究の将来的な展望をロゼッタストーンに例えて語られました。これまでは、フローサイトメトリー(集団レベル)、顕微鏡検査(細胞レベル)、シーケンシング(遺伝子レベル)という3つの異なる細胞分析技術で細胞研究が行われていましたが、この3つドメインを統一して、1つの言語で包括的に1細胞研究を進められるような「1細胞研究のロゼッタストーン」を目指すことが最終目標だと述べられました。
本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外402名の方々にご参加いただきました。
合田圭介先生、ご講演いただきありがとうございました。