スタンフォード大学 池野 文昭 先生「日本の医療イノベーション教育の立ち位置:過去10年で得られた手ごたえと未解決課題」を開催しました
4月27日(水)18:00-19:00、今年度第1 回目の未来型医療創造卓越大学院プログラム(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門)FM DTS 融合セミナー 池野 文昭 先生 (スタンフォード大学 プログラムデザインプログラムディレクター (ジャパンバイオデザイン))の講演会をオンラインにて開催致しました。
今回の講演では、池野先生ご自身の経験を交えながら、この10年での日本の医療イノベーション教育の道のり、見えてきた課題、そして課題解決に向けたヒントについて解説いただきました。
2012年、医療機器産業を日本経済成長戦略の要として打ち出すために、池野先生は「太平洋を挟んだ医療機器エコシステム」を作ることを考案されました。その後2013年、医療機器ベンチャーキャピタル「メドベンチャーパートナーズ」を創業、2014年にシリコンバレーの医療機器企業支援会社と日本が交流するための交流会を開催されるなど、イノベーションにおいて必要な「人のつながり」を作るために尽力されました。その中で、プレイヤーを育てることが最も重要であると考え、2015年に起業家育成講座「ジャパンバイオデザイン」を開始し、共通のマインドセットをもつ人材が全国各地に広がっていきました。このように、医療機器開発においてはノウハウも重要である一方で、「Know who」、すなわち人的資源情報のネットワークも重要であると述べられました。
この10年間で見えてきた日本の医療機器開発の課題として、日本企業の終身雇用という風習により社外へ視野が広がらず、企業内からイノベーターが出てこないことを挙げられました。この解決案として、30~40代の社員へ再教育を行い、社外にイノベーションを作るチームを設置することを一例として提案されました。また、医療機器開発の発展のためには異業種からの参入が必要不可欠である一方で、異業種から医療分野に参入する際のハードルの高さも課題として挙げられました。この課題解決には、いかに医療者と関係を築くことができるかが鍵になると話されました。そして最後の課題として、共通のマインドセットを広げることの難しさについて触れ、人材育成はすぐには成果が出ないため軽視される傾向にあるものの、決して人材教育はおろそかにしてはならないと述べられました。
最後に、医療機器開発においては全ての中心に人がいて、全ての中心に患者がいるということを常に忘れないということが非常に大切であり、医療機器開発でバイオデザインを活用するには「人」がキーワードになるとまとめられました。
本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外567名の方々にご参加いただきました。池野先生、ご講演ありがとうございました。