帰朝報告 :ドイツ(ケルン・マールブルグ)・フランス(ストラスブール)
2019年8月28日から9月3日まで、ドイツ(ケルン・マールブルグ)・フランス(ストラスブール)で医療・ヘルスケア領域におけるAIやARなど新しいテクノロジー(emerging technology)の開発・実用、これらを実用化に向けて医療現場で実証するための施設や取り組みをみてまいりました。
8月28日にケルンに入り、昨日ケルン大学病院における産業と多国籍企業のAI開発について実情視察と打ち合わせをしてまいりました。8月30日はフランスストラスブールのIRCADおよびIHUを訪問し(世界トップクラスの内視鏡外科医集団で、2001年にストラスブールとNYを回線で結んで手術を行ったリンドバーグ手術を行ったことでも有名なJack Marescaux先生がリードされています)、Swanstrom先生と自分たちがのばすべきテクノロジーの方向性について大きな示唆をいただいてきました。最後に8月31日に再びドイツに入り、2001年以来、お世話になっているChristopher Nimsky教授が主宰されるMarburg大学脳神経外科にいってまいりました。Nimsky先生はEralangen大学時代には術中MRIに関するトップエキスパートとして数値計算も含めて取り組んでこられ、現在もそうした蓄積があるからこそできるさまざまな取り組みをされており、たいへん勉強になりました。
8月21日~24日まで視察してきたインド・ベンガルールと同様、現時点では、IoT、デジタルヘルス、AIの応用競争ではやらなくてはならないことだらけであることを痛感しました。
その一方で、これらの新しいテクノロジーでは、目新しさ、スペックだけでは何の社会課題の解決にも至らないのは、むしろこれまで以上であり、現在の医療・ヘルスケアが内包する課題をしっかりと定義づけ(誰の、どういった課題を解決することで、どういった望ましいアウトカムを出すための方法が求められているか)をするためのデザイン思考等を用いながら、patient flow、work flowをしっかりと多業種で現場観察するシステム(東北大学病院ベッドサイドソリューションプログラム アカデミック・サイエンス・ユニット:ASU)は大きなつよみ(core competance)になると感じました。また、デザイン思考を用いて、課題設定とチーム組みをして、大きな方向性のサポートを医療機関がハブとなって一緒に取り組む、医療プロフェッショナルがさまざまなエキスパートとのリエゾンになることもこれから推進するべきである、と改めて感じた次第です。
成田をでてから今回の旅程が意味不明な行動をとっていることに気づきましたが(笑)、ドイツやフランスの風景、食事、文化にも久しぶりに触れ、リフレッシュさせていただきました。Nimsky教授ご夫妻をはじめ、今回も多くのみなさんにお世話になり、楽しく、有意義な時間となりました。
今回は医学部学生の野口侑太さんも一緒に渡航しました。手術現場からAIの開発まできっと刺激を受けられたことと思います。
文責 中川敦寛